2025/11/10

鉄骨よりコストダウンできる！脱炭素時代に選ばれる「木造倉庫・工場」の真価

倉庫や工場を計画する際、「鉄骨造（S造）」が標準的な選択肢だとお考えではありませんか？

しかし、近年、建築技術の進化と市場の変化により、鉄骨造と比較してコスト面、環境面、そしてランニングコスト面で大きな優位性を持つ「木造倉庫・工場（W造）」が、特に中小規模の建築で選ばれるケースが急速に増加しています。

コストと性能を両立させ、次世代のビジネスインフラとして注目を集める木造建築の真価について解説します。

1. 建築コストの優位性：なぜ鉄骨より安くなるのか

木造建築のコストメリットは、主に以下の要因から生まれます。

1-1. 材料費の高騰の影響を受けにくい

鉄骨造で使用される鋼材は、国際的な市況や資源価格の影響を直接受けやすく、近年は特に価格が高止まりする傾向にあります。一方で、木材は流通が比較的安定しており、国産材を活用することで材料費の変動リスクを抑えやすいというメリットがあります。

1-2. 基礎工事費と工期の短縮

木造は鉄骨造に比べて建物全体の重量が軽いため、地盤への負荷が少なく、基礎工事の規模を縮小できるケースが多くなります。軟弱地盤での地盤改良費用や、基礎工事の費用を大幅に削減できる可能性があります。また、加工が容易なため、現場での作業効率が高まり、工期の短縮にもつながり、人件費の削減に貢献します。

2. ランニングコストと環境性能：未来への投資

木造は初期費用だけでなく、長期的な運用コストにおいてもメリットを提供します。

2-1. 高い断熱性能による光熱費削減

木材は、鉄やコンクリートと比較して非常に高い断熱性能を持っています。これにより、夏は涼しく、冬は暖かい室内環境を維持しやすくなります。

倉庫・工場は空間が大きく、空調コストが経営を圧迫しがちですが、木造は空調負荷を軽減するため、電気代や燃料費といったランニングコストを大幅に削減することが可能です。これは、省エネ化が求められる現代において、企業価値を高める重要な要素となります。

2-2. 減価償却期間のメリット

法定耐用年数（減価償却期間）は、鉄骨造の多くが19年～34年であるのに対し、木造は一般的に20年～22年です。償却期間が短いほど、早い段階で費用を計上できるため、税務上のメリットを受けやすくなります。（ただし、実際の償却年数は構造や用途によって異なります。）

3. 法的な制約緩和と技術革新

「木造は火に弱い」「木造では大きな建物は建てられない」というイメージは過去のものです。

耐火技術の進化: 防火地域・準防火地域でも建設可能な**「準耐火構造」や「耐火構造」**に対応する技術が確立されています。
大規模化への対応: CLT（直交集成板）や集成材の活用により、大規模かつ大スパン（柱と柱の間隔）が必要な倉庫・工場建築も可能になり、空間の自由度が増しています。